今回、ウッドスピリッツとしては国産ヒノキの葉および材の精油とタイ国産ユーカリ属カマルドレンシスの葉精油(ユーカリ油)を検討した。両樹種ともにそれぞれの国において植林樹種として一般に使用されているものであり、バイオマス資源としては今後最も有望である。ユーカリ油はシロアリに対する殺蟻効果が高く、天然殺蟻剤として使用可能であることを明らかにし、殺蟻の生理的メカニズムの解明と併せてJournal of Wood Scienceに論文として発表した。更に、ユーカリ油については昨年度より2種増やして11種の菌に対して抗菌効果を調べ、つくばで開催された日本木材学会大会において発表した。カビに対しては菌種によって効果がかなり異なり、木材腐朽菌に対しては十分な抗菌効果が見られた。特に、今回追加した植物病原菌に対しては特に効果が高いことが分かった。ヒノキ精油については廃棄発泡ポリスチレンを溶かした溶液をスギの柱材に塗布して野外における防腐・防蟻試験を継続中である。さらに、ヒノキ精油の蒸気をディーゼル排ガスの処理に用いると排ガス中の窒素酸化物の減少、炭塵微粒子の除去に効果的であることを明らかにした。ヒノキ芳香を嗅ぐことによって血圧の低下、ストレス指標の減少、脳波中のα波の増加などをもたらし、自律神経系の副交感神経を亢進させる働きのあることを実験により明らかにした。これらのことについてはTrans. Material Research Sci. Japanに投稿した。以上の2種の樹木精油に加えて、今回よりユーカリと同じフトモモ科のメラルーカ属ロイカデンドラの葉精油、カユプテ油の検討を開始した。
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