内分泌かく乱物質としてのダイオキシン類の環境汚染が大きな社会問題となっている。これらダイオキシン類を汚染環境から速やかに除去することが急務であるが、それにはまず汚染濃度を正確に測定する必要がある。そのためには現在までの所、高分解能質量検出器付きガスクロマトグラフ(GC-MS)を使用する方法が最良であるが、この機器は高価である上に、分析に時間と費用がかかり、また高度な操作技術を要するという難点がある。よって本研究では、このGC-MS法に代わる簡便なダイオキシン類汚染の一次検出法として、ダイオキシン類暴露によりその発現が促進あるいは抑制される植物遺伝子をダイオキシン類汚染のモニタリング用遺伝子として用いる新規なファイトモニタリングシステムの構築を目指す。本年度は、ゲノム解析が完了しているシロイヌナズナを用いて、ダイオキシン類のグループであるコプラナーPCBの一種PCB126、PCDDの一種TCDD、および無塩化ビフェニールを暴露化学物質として、暴露により発現が変動する遺伝子をcDNAマイクロアレイ法により検索した結果、発現が促進あるいは抑制される遺伝子が合わせて数十個見出された。しかし、cDNAマイクロアレイ法では遺伝子発現量の定量結果の精度に問題が残ることから、さらに、サイバーグリーンを蛍光インターカレーターに用いるリアルタイムPCR法で遺伝子発現量を高精度に定量した結果、暴露時間と発現応答性、あるいは暴露化学物質と発現応答性の関係から、ダイオキシン類汚染のモニタリング用遺伝子として適当と考えられる遺伝子を数個に絞る事ができた。
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