クリソタイルあるいはクロシドライトのコロイド溶液中に遺伝子pUC18を加えた後、宿主細胞である大腸菌をそれにけん濁させ弾性体曝露させると、大腸菌はpUC18を取り込んで、抗生物質耐性に形質転換することを明らかにしている。クリソタイル、クロシドライト以外の粘土鉱物にpUC18を大腸菌に導入させる効果があるのか調べたところ、まったくそのような効果はなかった。したがって大腸菌に遺伝子を運搬できるのはクリソタイルとクロシドライトだけであった。クリソタイルコロイド溶液の濃度を様々に変化させて、大腸菌の形質転換数を調べた。クリソタイル濃度40ng^〜1000ng/mlの間で、大腸菌の形質転換体数とクリソタイル濃度には相関があった。砂礫中のアスベスト濃度を算出するモデル実験として、海砂中にクリソタイルが混在する場合を想定した。海砂1g中にクリソタイルが0.15-15mg含まれている場合、クリソタイル濃度と得られた大腸菌の形質転換体数には相関が認められたことにより、砂礫中のアスベスト濃度の予想は可能であるといえる。蛍光顕微鏡観察によると、クリソタイルは長繊維を除いて針状結晶として観察することはできず、直径5-9μm付近の不定な凝集体として観察された。この凝集体は幅約0.1μm、長さ約0.5-3μmの針状結晶が集まって形成されたものである。したがって形質転換数は、5-9μm付近の大きさの凝集体の数と相関があると思われる。
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