微細針状材料と細菌を含むコロイド溶液をハイドロゲル上で曝露させると、滑り摩擦により穿刺中間体を形成する。この現象による遺伝子導入技術はハイドロゲル曝露法と呼ばれ、アスベスト検知にも応用されている。本年度では、クリソタイル以外のアスベストの検知感度向上を課題とし、アミノ基を有し、水溶性に富んだシランカップリング剤6種を用いてアスベストの検知感度域を比較した。 シランカップリング剤で処理したアスベスト、大腸菌JM109、pUC18DNAを2.8%寒天、LB成分、抗生物質(アンピシリン)を含むハイドロゲル上で曝露させた。この際アスベストは細菌への遺伝子導入の為の微細針状材料として機能する為、曝露により得られた形質転換体数からアスベスト検知を行った。さらに様々な工業材料サンプルで本法によるクリソタイル検知を試み、公定法での結果と比較した。 これまで検知が困難であったアモサイト、トレモライト、クロシドライトは、シランカップリング剤(aminoethyl aminopropyl triethoxysilane)で処理することで濃度25~75ug/mlでの検知を達成した。しかし、アクチノライト、アンソフィライトは100ug/ml以下での検知感度の向上は見られなかった。一方では、ハイドロゲル曝露法は工業材料サンプルからのクリソタイル検知には公定法での検知結果と一致し、含有量0.1%以上を判別可能な鋭敏な感度を示した。今後、本法を用いたアスベスト検知技術の確立の為には、アクチノライト、アンソフィライトの検知感度向上の達成が必要であると思われる。
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