微細針状材料と細菌細胞から成るコロイド溶液をハイドロゲル界面の摩擦場に置くと、微細針状材料-細菌穿刺中間体が形成される(ヨシダ効果)。穿刺中間体には外来プラスミドを取込む性質が見いだされていた。自然界においては、本現象は地震発生時に起こると仮定している。 受容細胞であるみPseudomonas sp.またはBacillus subtilisと供与プラスミドとクリソタイルを含むコロイド溶液を、バイオフィルムを想定したジェランの表面に広げた。ジェラン表面に変成岩を想定したシリカビーズをのせ、地震を想定した横揺れ振動(50~130ガル)を与えて、シリカビーズをバイオフィルム表面でころがした。その結果、受容細胞は供与プラスミドを取込んで抗生物質耐性に形質転換することが確かめられた。コロイド溶液中のクリソタイルをカオリナイトまたはベントナイトに置換して横揺れ振動を与えたところ、受容細胞はプラスミドを獲得することはできなかった。固いジェランはPseudomonas sp.のプラスミド取込みを促進したが、やわらかいジェランは促進しなかった。バイオフィルム表面での細菌の遺伝子の取込みはクリソタイルといった針状粘土鉱物をともなった地震摩擦が必須である。これらの実験結果は、蛇紋岩の亀裂中に形成されたバイオフィルムが地震刺激を受けた場合、バイオフィルム表面の細菌は遺伝的変化が生じ易いことが示された。蛇紋岩層における地震刺激は蛇紋岩亀裂中のバイオフィルムの細菌進化原動力の一要因であると考えている。
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