不飽和土壌の凍結・融解、あるいは凍土中への融雪水の浸潤にともなう物質・エネルギー移動を理解することを目的に、本年度はカラム室内実験および、試料の物性分析、センサー開発、数値解析モデルの検討を行った。まず、実際に寒冷環境下にある耕地の土壌として北海道十勝農業研究センターの圃場の土を、黒ぼく土の対照として三重県野菜茶業試験場の土を採土した。NMR法、DSC法、露天計測法(本年度購入のWP4を使用)により、各土の不凍水(0℃以下でも凍結しない水)の物性を明らかにする一方、それぞれの測定法の利点と問題点をまとめた。こうした測定法の検討はこれまで殆どなされておらず、今後の不凍水研究に対し一つの指針を与えられる物である。次に、カラム実験に使用するセンサーの改良を行った。TDR水分センサーについては、氷量の異なる土の検量線(誘電率-不凍水量関係)と解析モデルについてまとめた結果を海外雑誌に、熱伝導率測定と氷量推定モデルについては、結果を国内雑誌にそれぞれ発表した。ここで、これらの試料とセンサーおよび昨年度作成した凍結カラムを用いて成層/単層不飽和土の凍結実験および、融解浸潤の予備実験を行った。この結果、これまでに報告のない詳細さで、凍結過程における凍結面近傍の圧力、水分量、温度変化をモニターすることができた。本年度は、特に凍結過程に焦点をあて、凍結時の土中の圧力変化にともなう水分移動の土質による違い、凍結時の水分特性と透水係数の変化を解析中である。また、凍結の進行が比較的速やかな実験に対するクラウジウスクラペイロンの式適用限界を示した上で凍土の数値計算の修正法を提案し、van Genuchten氏やSimunek氏らと討議を重ね、アメリカ土壌学会で発表した。
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