有明海において、赤潮が発達したときに、その藻類の日周鉛直移動および細胞分裂頻度を調べるために、合計3回の野外調査を行った。 調査は、熊本県上天草市で7月31日から8月1日、佐賀県白石町の沖合いでは8月14日から15日、長崎県小長井町では9月の7日から8日にかけて行なった。 熊本県、長崎県での調査時には、Chattonella属の赤潮が、佐賀県での調査時にはAKashiwo属の赤潮が発生していた。いずれに調査においても、日周鉛直移動の追跡に成功し、Akashiwo sanguineaの増殖速度については、室内実験結果も合わせて、見積りを行ったところ、0.45との値を得た。 また、Chattonella属については、昨年より引き続き室内実験を中心として、その細胞周期解析を行っている。これまでに、Chattonellaは最大で一晩に2回の細胞分裂を行なうことが出来ることを明らかにした。またその細胞周期はこれまでに藻類で知られていたものとは全く異なるサイクルを持っていることを明らかにしつつある。野外実験結果については、Akashiwo sanguineaに日周鉛直移動、現場での増殖速度見積り結果をまとめ、現在、Plankton and Benthos Research誌に投稿し審査を受けている。また、Chattonellaの野外調査結果については、昨年度の結果と合わせて、論文にまとめ、Phycologia誌に投稿し、審査を受けている。 そのほか、有害赤潮藻類Pfiesteria-like dinoflagellatesの増殖速度と環境要因の関連について、論文を発表した。
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