有明海において、Chattonellaの赤潮発達過程および日周鉛直移動と細胞分裂頻度を調べるために、野外調査を行った。赤潮発達過程の野外調査は、2箇所の定点を設け、6月11日から8月9日まで合計11回おこなった。また、赤潮が形成された7月7日から8日にかけて、日周鉛直移動および細胞分裂頻度を調べるために24時間観測を行なった。 Chattonella属は、6月29日に初めて検出された。6月下旬の降雨による出水直後、7月5日にその細胞密度が4000 cells ml^<-1>を超える大規模な赤潮を形成した。その後、7月10日から再び降雨、出水があり、2箇所の調査定点ともに、表層塩分が5近くに低下した。これに伴って、Chattonella細胞数のピークは塩分が10を超える水深に移動し、塩分の低い海面近くでは7月20日に珪藻のブルームが発生した。これまで出水後に大増殖するのは一般に珪藻と考えられてきたが、場合によってはChattonellaも、赤潮(ブルーム)を起こすことがわかった。ブルームピーク時の24時間調査の結果とこれまでの調査結果を合わせて考えると、Chattonellaは有明海においては、その地点の水深によらず、昼は水深0-1m、夜は水深3-5m程度に分布することは分かってきた。 これまでの結果のうち、Akashiwo sanguineaの日周鉛直移動、現場での増殖速度見積りの結果について、学会発表を行い、また論文を、Plankton and Benthos Research誌に投稿し、受理された。本年度の、Chattonellaの野外調査結果についても、結果を整理し、海洋学会にて発表した(震災により、発表大会自体は中止)、論文をJournal of Oceanography誌に投稿中である。
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