研究概要 |
超好熱菌Pyrococcus horikoshii由来CutA1(PhCutA1)は変性温度(T_d)が148.5℃という史上最高の熱安定性を示し、多くのイオン性残基を持つ。イオン性残基による熱安定化機構を立証することを目的とし、今年度は以下の結果を得た。1、PhCutA1内における正荷電アミノ酸残基の熱安定性への寄与を調べた。R36A,K66A,K70A,R82A変異型のT_dはそれぞれ約147℃,142℃,145℃,138℃であり、負荷電アミノ酸残基を置換した場合よりもT_dが低下する傾向を示した。これによりPhCutA1の熱安定性においては正荷電アミノ酸残基による影響が大きいことが示唆された。2、大腸菌由来CutA1(EcCutA1)へのイオン性残基導入による熱安定性向上を試みた。EcCutA1 S11V/E61T変異型(T_d=112.3℃)を対象とし、TKSA-GA法を用いて置換残基を選出した。順次安定性の向上が予測されたE21K/E59K,S105K,Q74K,A22K,N8E,T101K,A75K,A10K,V70K変異型のT_dは108-113℃の温度範囲で変化した。今後は、予測に反して安定性が向上しなかった理由をFoldX法等により検証し、安定性向上の方針を立てる。3、SPMP法によるEcCutA1の熱安定性向上の試みを更に発展させた。T_dが約14℃,24℃上昇したEcCutA1 E61V,S11V/E61V変異型タンパク質に関してX線立体構造解析を行った結果、約2.3Åの分解能で解析することができた(PDB ID:3AA9,3AA8)。得られた結晶構造を用いて再度SPMP法による評価を行った結果、S11Vは側鎖間相互作用、水和、局所構造、E61Vは主に局所構造が改善されたことにより熱安定性が上昇していることが示唆された。
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