研究概要 |
超好熱菌Pyrococcus horikoshii由来CutAl(PhCutAl)は変性温度(Td)が148.5℃という史上最高の熱安定性を示し、多くのイオン性残基を持つ。イオン性残基による熱安定化機構を明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。1、PhCutAl内における正荷電アミノ酸残基の熱安定性への寄与を昨年度に引き続き調べた。R25A,R68A,K19A,K101A変異型のTdは野生型と比較してそれぞれ約13,3,3,4℃減少した。PhCutAl内でイオン対を形成していると予想される正負荷電アミノ酸残基を同時に非荷電アミノ酸残基に置換することでイオン対消失の影響を調べたところ、R58A/D60N,R68A/E24Q,K70A/D91N,K66A/D87N,K101A/E64Q変異型のTdはそれぞれ約7,2,5,10,3℃減少した。一方のみのイオン性残基消失の場合と比べると残基部位によって多様な変化が見られた。また、PhCutAlに含まれるイオン対の数は非常に多く、多少のイオン対削除が生じても他のイオン対が補完するため、顕著な安定性の低下が見られないことが明らかとなった。2、FoldX法を用いて、イオン対反発により不安定化に寄与していると予測されるイオン性残基を選出した。D86N,D48N変異型では安定性が増加したが、予測に反してR33M(/A)変異型ではTdが約8℃減少していた。このような理論通りに安定性が増加しない変異型を更に詳しく解析することで、熱安定性予測の精度向上が可能になると考えられる。3、SPMP法により選出したEcCutAlの不安定化に寄与している一連のアミノ酸残基変異型に関する論文が掲載された。この中で、高い熱安定性変化の原因をX線結晶構造解析により得られた立体構造を用いて定量的に明らかにすることができた。
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