研究概要 |
スピロリド類は1995年にWrightらによって単離・構造決定された化合物群であり、ムスカリン受容体阻害作用を示すことが知られている。本化合物群の全合成に向け、本年度はヘミケタールアルコキシドの分子内ヘテロMichael反応による[6, 5, 5]-ジスピロケタール環部の構築を試みた。 環化前駆体となるC10-C24フラグメントの合成は1, 3-ジチアンを出発原料として行った。(S)-3-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、L-リンゴ酸よりそれぞれ調製したヨウ化物で順次アルキル化を行った後、保護基の変換、一炭素増炭等を経てC12-C20部に相当するメチルケトンを得た。このケトンから亜鉛エノラートを生成させてD-リンゴ酸より調製したアルデヒドと縮合させた後、脱水、1, 4一還元を経て不要な水酸基を除去した。次にカルボニル基に対してキレーション制御により立体選択的にメチルGrignard試薬を付加させ、保護基の変換、酸化、Horner-Emmons反応による不飽和エステル導入等の7工程を行うことで環化前駆体を合成することができた。 ジスピロケタール化反応では新たに3つの不斉中心が構築されるため、最大8つの立体異性体が生じる可能性がある。そこで、基質調製と平行してそれらの立体異性体の最安定配座および立体エネルギー計算をMacroModelにより行ったところ、望みの立体異性体が他の異性体より最低でも1.36kcal/mol安定なことが分かった。この結果を踏まえ、現在環化反応の条件検討を行っている。
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