研究概要 |
スピロリド類は1995年にWrightらによって単離・構造決定された化合物群であり、ムスカリン受容体阻害作用等を示すことが知られている。二重ヘミケタール形成/ヘテロMichael反応を鎖状の基質に適用した場合に望みとしないトランソイド異性体の生成が優先したことから、渡環型反応を利用することを考え、MacroModelにより立体エネルギーを計算し、反応基質の設計を行った。その結果、C24位とC10位を炭素数4のテザーにより連結し、環状とした基質を用いるとよいことが分かった。 この結果を踏まえて基質の調製に着手した。まずL-グルタミン酸から文献記載の方法により得られるラクトンを出発物質として、キレーション制御による立体選択的なGrignard反応剤の付加等14工程を行うことでC15-C22フラグメントを1,3-ジチアン誘導体として合成した。Sharpless不斉エポキシ化反応を経て調製したC10-C14部に相当するヨウ化物を用いてアルキル化した後、C22位のTESエーテルを選択的に脱保護し、Parikh酸化してアルデヒドに導いた。Horner-Emmons反応によりテザー部分を組み込んだα,β-不飽和エステルへと変換した後、第一世代Grubbs触媒を用いて閉環メタセシスを行い、20員環ラクトンを構築した。最後にPMB基の除去、Albright-Goldman酸化、ジチアンの脱保護を行うことでジスピロケタール前駆体を得ることができた。現在、立体選択的に望みの異性体を得るための条件検討を行っている。
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