研究概要 |
22年度は,前年度達成したプレキナマイシンの全合成とキナマイシン類の基本骨格の合成研究について学術論文に発表した. ジャドマイシンAの合成研究 前年度達成したジメチルジャドマイシンAの全合成に引き続き,各種条件下,フェノール性ヒドロキシル基の保護基であるメチル基の脱保護によるジャドマイシンAの全合成を目指し検討した.BBr3を用いた場合,目的のジャドマイシンAの生成は見られたものの,ジャドマイシンAの11位臭素化体などの副生成物を与えた.その他,BCI3,9-I-9-BBN,LiI-lutidineなどの脱メチル化の系を検討したが,目的のジャドマイシンAを得ることができなかった.そこで保護基としてメチル基の代わりに脱保護の容易なMOM基を有するベンゾオキサボロール(A環部位)とブロモジュグロン(CD環部位)の鈴木一宮浦カップリングを経由するルートを検討した.2つの基質は市販の3,5-ジメチルフェノールと1,5-ジヒドロキシナフタレンよりそれぞれ4工程で合成した.これらを用いて鈴木-宮浦カップリングを検討し,Pd(P(t-Bu)3)4を用いた場合に対応するアルコールを77%で得ることができた.C環上のキノン部位にL-イソロイシンを導入してアミノ酸とし,A環上のアルコール部位をDess-Martin酸化してジャドマイシンの基本骨格を持つ環状アミナールへと変換した.さらにこのものの2つのMOM基を塩酸で脱保護し,目的とするジャドマイシンAの全合成を達成した. 結果として,本課題では,A環部位に対応するフェニルボロン酸誘導体とCD環部位に対応するブロモナフタレン誘導体との鈴木-宮浦カップリングを機軸とするナフタレンルートを経由して,プレキナマイシンとジャドマイシンの全合成,およびキナマイシン類の骨格合成を達成した.
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