研究概要 |
(1)酸化されにくい,(2)炭素-ケイ素結合を開裂(あるいは活性化)して炭素アニオン(あるいはシリケート)を生成させる,というフッ素アニオンの二つの特性を活用して,有機ケイ素化合物から炭素アニオンを発生させると同時に,これをCe(IV)酸化剤で一電子酸化すれば,炭素ラジカルが発生するのではないかという考えのもと,研究を行った. 昨年度の研究では,1,1-ジフェニルエテン(1)存在下,アリルトリメチルシラン(2)をフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)と(Bu_4N^+)_2Ce(NO_3^-)_6 3で処理したところ,ラジカルの発生を示すような反応生成物が得られなかったため,今年度は,有機ケイ素化合物として(2)の代わりにベンジルトリメチルシラン(4)を用いて,種々の反応条件下で反応を検討した.しかし,期待に反して,この場合にもラジカルの発生を示すような生成物は全く得られなかった. そこで,用いるCe(IV)酸化剤についても検討したところ,(BuO)_3PO 5のようなリン酸エステル類とCe(IV)から新たに生成しているものと思われる酸化剤が,酸化剤3と同様に強い一電子酸化力を有し,ラジカル反応を引き起こすことが,モデル実験(有機ケイ素を用いない)によって確認できた.今後,この結果をもとに,リン酸エステル類とCe(IV)から生成する新たなCe(IV)酸化剤を単離・精製し,有機ケイ素化合物を用いた反応系への適用について,更に検証する予定である.
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