本研究の端緒は、まず原材料の菌類(キノコ)を採集することであった。気候や土壌の適不適があるため長崎県下でもキノコが発生する場所は限られており、まずその探索が重要なので、ここ数年かけてシロオニテングタケ、コウボウフデ、タマゴテングタケモドキ、ニセクロハツなどについて採集し、成分研究しながら調査を続けてきた。これには民間アマチュア団体(長崎キノコ会)の協力を得てキノコの生育地域の発見開拓と、採集を行った。現時点で20数種類のキノコを採集し、ごく最近もカラムラサキハツを採集した。グルコース:ポリペプトン:酵母エキス:KH_2PO_4:MgSO_4・7H_2Oを含む培地を、120℃、20分間滅菌し、平面培地で種菌糸を分離し、傾斜培地に植え付けて冷蔵庫中保存する。要に臨んで液体培地を調製し、滅菌して大量培養によりこれらキノコの胞子から菌体を得て20日間程大量増殖させた。大量培養した菌糸を集め、メタノールで抽出し、抽出エキスを多種のカラムクロマトで分離精製した。特に、精密精製にはHPLCを用いた。 今年度はシロオニタケの菌糸について検討を加えたが、他の菌糸成分を含めて、殆どがエルゴステロール等の普通にキノコの成分として知られるものであったので、培地に着目し、2種の特異な構造を持ったセスキテルペンとジテルペンを各一つずつ得た。セスキテルペンについては構造を推定できたが、ジテルペンについては構造解析が困難であり、量的な増量を図り構造決定する準備段階にはいった。
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