本研究の端緒であるキノコの採集は、長崎県の資源開発を意図したため長崎県内に拘り、同好の仲間である「長崎きのこ会」のメンバーによる協力を得て県内広範囲で行った。この内、昨年の報告にあるように、シロオニタケ、コウボウフデ、タマゴタケモドキ、ニセクロハツなどの成分を検索してきた。 本年もあまりに一般的で最後の採集となったが野生のシイタケを採集した。 現時点で25種類のキノコを採集し、昨年度と同じくシロオニタケについてグルコース:ポリペプトン:酵母エキス:KH_2PO_4:MgSO_4・H_2Oの組成からなる培地中で液体培養した。その結果は昨年報告したように1種のセスキテルペンと1種のジテルペンを単離した。このいずれもが構造未確定であった。 本年度は、チャオニテングタケについて同様の方法で検討した。培養によって得られた菌糸体からは依然としてステロール類のみを与えた。そこで、シロオニタケ同様培地成分の検討を行ったところ、意外にもシロオニタケで得られたものと同じ2種のテルペンが得られた。両者とも同じテングタケ科であることから、テングタケ科特有の成分である可能性があるが、現在のところ定かではない。セスキテルペンはガム状物質であったため各種NMRスペクトルの解析を駆使して、全く新しい骨格を持つ化合物であることが分かった。ジテルペンについては各種NMRを駆使しても構造を明らかにできなかったが、結晶化を試みたところサイコロ状の結晶が得られ、直ちにX-線結晶解析に付したところ極めて特異な構造を持つことを明らかにした。現在、この結果を報告すべく執筆中である。今後、目的とする抗ウイルス活性を調べる予定である。
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