著者は、これまでに天然薬物から機能性糖鎖の探索研究を行っている。その結果、配糖体の構成オリゴ糖鎖と生物活性に相関があることが判明した。また、糖鎖とアグリコン部が相補的に作用して活性発現することが示唆されたことから、活性糖鎖構造を他のアグリコンにトランスグリコシル化し、糖鎖とアグリコンの相互作用を検証するとともに詳細な構造活性相関を検討し、最適なアグリコン部のファーマコフォアを明らかにすることを企図した。 そこで、平成20年度は、先ず、糖鎖部分の多様化の一環として従来のトランスグリコシル化反応で利用可能な2種のオリゴ糖鎖(カコトリオースならびにリコテトラオース)に加えて、オンジサポニンから糖鎖ライブラリーの調製を実施した。即ち、生薬・遠志をメタノールで抽出してポリスチレンゲルで分画したオンジサポニン画分から、ヨウ化リチウムとアリルアルコールを用いてアリルグリコサイドとして純粋な化合物を3個得た。また、有機酸が結合した新規の糖鎖を得ることも出来た。 一方、カコトリオースの末端糖鎖のラムノースをフコースとマンノースに置換した新規のカコトリオース誘導体を合成し、細胞増殖抑制活性試験を行った。その結果、末端フコース体はHepG2細胞に、末端マンノース体はRAW細胞に特異性が観測された。さらに、リコテトラオースに関しては、トマチンとトマチナーゼにより効率的に切り出し、各種化学変換を行い、還元末端がオキシアミノ基、プロパギール基の糖供与体に変換することが出来た。 今後、オリゴ糖鎖部分とアグリコン部分を容易に組み合わせて、オリゴ糖鎖を基盤としたケミカルライブラリーを構築する方法を開発する予定である。
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