配糖体の構成オリゴ糖鎖と生物活性に相関があることが判明し、糖鎖とアグリコン部が相補的に作用して活性発現することが示唆されたことから、活性糖鎖構造を他のアグリコンにトランスグリコシル化し、糖鎖とアグリコンの相互作用を検証することを計画した。 平成21年度は、臨床でアジュバンドに用いられているQuillaja saponaria樹皮抽出物をODSカラムクロマトで精製し、高純度キラヤサポニン画分を得、糖鎖の機能の探索を調べることとした。キラヤサポニン画分の28位エステル結合糖鎖は、アリルアルコール存在下、ヨウ化リチウムを用いて処理することでアリルグリコサイドとして切り出した。各種カラムクロマトにより分離しオリゴ糖鎖を得ることが出来た。また、3位のエーテル結合糖鎖はエンドグルクロニダーゼ(グリチルリチンハイドラーゼ:GHase)で切り出せるか試験した。NBRCより購入したAspergillus nigerをCA培地で3日間振盪培養し菌体を増殖後、キラヤサポニンを含むCA培地で更に1日培養することで酵素誘導を行った。菌体を除去した培養液を硫安分画し、限外濾過することで粗酵素液を得た。得られたGHaseをキラヤサポニン画分と反応させたが生成物は得られなかった。しかしながら、28位エステル結合糖鎖を切り出したプロサポゲニンを基質としたところ、GHaseによる生成物を得ることが出来た。得られた糖鎖の構造はNMRにより決定した。一方、抗腫瘍活性を有するトマチン糖鎖・リコテトラオースに関しては、各種化学変換を行い、還元末端がオキシアミノ基、プロパギール基の糖供与体に変換した。リコテトラオースのオキシアミン誘導体はベンズアルデヒドと縮合反応を、プロパギール誘導体はベンジルアジドとクリックケミストリーを行い、非無水条件で中程度の収率で目的とする生成物を得ることが出来た。今後、様々なアグリコン部にリコテトラオース誘導体を導入することで、均一なオリゴ糖鎖部を有するケミカルライブラリーの構築が可能となった。
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