配糖体の構成オリゴ糖鎖と生物活性に相関があることが判明し、糖鎖とアグリコン部が相補的に作用して活性発現することが示唆されたことから、活性糖鎖構造を他のアグリコンにトランスグリコシル化し、糖鎖とアグリコンの相互作用を検証することを計画した。 平成22年度は、トマト地上部に高含有するトマチンを原料として、ガン細胞増殖抑制活性に関与が示唆されているリコテトラオースをトマチナーゼで切り出し、ホイスゲン反応を応用したアセチレン基とアジド基の環化反応により、配糖化のステップを簡略化できないか検討した。まず、リコテトラオースへのアセチレン基の導入を、トマチナーゼの可逆反応性を利用した酵素反応と有機合成で行う方法と2種類検討した。前者では、トマチナーゼでトマチンを処理する際にプロパルギルアルコールを添加することで、8%と低収率ながらも目的とするリコテトラオース誘導体を天然型のβ結合体として得ることができた。後者では、リコテトラオースの水酸基のアセチル保護、続いて還元末端のガラクトース部分のアノマー位を脱保護し、トリクロロアセトイミデート体に変換、プロパルギルアルコールとグリコシル化し、非天然のα結合体が選択的に5工程41%の収率で得られた。これらのリコテトラオース誘導体に対して、アジド基を有している抗エイズ薬で細胞毒性もあるAZT並びにコレステロールとジオスゲニンの3位アジド誘導体とホイスゲン反応を行い、それぞれトリアゾール環を介してアグリコン部を導入した。本反応において、Cu(I)の活性化剤をAZTとの反応で検討したところ、TBTAを用いると大幅な収率の上昇が見られた。ホイスゲン反応を応用したクリックケミストリーによるリコテトラオース誘導体の合成は簡便で応用範囲の広い方法である。今後、得られたトリアゾール環を介して結合させたリコテトラオース誘導体のガン細胞増殖抑制活性生物活性試験を行っていく予定である。
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