研究概要 |
これまでの実績や新規な研究計画に基づいて研究展開を図り、今年度は下記の成果を挙げた。 (1)ペプチドミメティックスを指向したフッ素置換オレフィンの合成に関しては、昨年度までの結果を踏まえて、フッ素とアルミニウムの親和性に着目した反応設計に基づいて脱フッ素アリル置換型反応を検討し、適度に官能基化されたフッ素置換オレフィンの合成法を検討した。すなわち、基質構造として末端ビニル型の3,3-ジフルオロ-4-ヒドキシ-1-アルケン誘導体を用いることにより、このものはトリアルキルアルミニウムと容易に反応してアリル置換型のアルキル基の導入を伴って対応するフルオロアルケンが高立体選択的に得られることを見出した。さらに、シリルアジドを用いたアジド化反応ではアルミニウムアルコキシドを活性化剤として添加することにより、目的とするアジド化(アミノ基導入)が高収率、高立体選択的に進行することを見出した。今後の検討課題として、反応の一般性やより効果的な活性化剤の開発を進めているところである。 (2)入手容易なトリフルオロアセトアルデヒドヘミアセタールを用いる反応開発では、オルト-アミノフェノール由来のN,O-アセタール類が種々のアルキルリチウムに対して特異な反応性を示すことを見出しているが、21年度は本反応の中間体の反応性の詳細な検討を行った結果、スパルテインのようなジアミンの添加が反応の加速に有効であり、アシルシランを含む種々の求電子剤との反応を実現した。さらに、窒素上の置換基を接触還元で除去可能なベンジル基とすることにより、N,O-アセタールの脱保護、すなわちケトンへの特異で簡便な変換法を確立した。また、類似のトリクロル体はフッ素体と異なる反応性を示すことを明らかにした。 (3)フッ素の置換基効果に着目した触媒開発についてはこれまでの継続として、炭素酸のひとつあるテトラキストリフルオロメタンスルホニルプロパンの利用を検討し、シリルオキシフラン誘導体の不飽和ケトンへの1,4-付加反応の詳細を明らかにした。さらに、本炭素酸が立体的に込み合ったケトンへのシリルエノールエーテル類のアルドール反応においても有効であることを見出した。
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