1.前年度までに、N-Methylalanineと4-Methoxybenzaldehydeとの反応によって、脱炭酸と同時にアルドールタイプの反応が起った生成物であるエフェドリンとその立体異性体の混合物が70%以上の収率で得られる事を見出した。しかし、その条件でN-Methylalanine以外のN-メチルアミノ酸で反応を行ったところ、多くの副生成物を生成し収率の向上は認められなかった。そこで本年度は、最も構造が単純であるアミノ酸としてN-Methylglycine(馬尿酸)を選定し、o-またはm-Benzyloxybenzaldehydを用いて反応を行ったところ、60%以上の収率で、副生成物を生じることなく目的のアミノアルコール誘導体を得ることに成功した。さらに、反応温度も従来の20度から80度にまで下げても反応が進行することを見出した。 2.これらの生成物を脱ベンジル化することにより、脂質代謝促進作用を有するてサプリメントとして用いられているシネフリン、血管収縮作用を有する医薬品として使用されているエピネフリンに導くことに成功した。 3.これら医薬品の合成法は、今までと比較して短行程で効率的であること、また反応自体がユニークであることから注目をあび、本年(平成22年)3月に開催された日本薬学会第130年会における発表が、優れた研究発表の一つとしてハイライトに選定された。 4.この反応は、不斉炭素が一つしかない生成物が得られるため、不斉合成の検討には大変良いモデル反応と考えられる。来年度は、この反応をさらに検討し、より緩和な条件でも進行する反応条件を見出すこと、さらに不斉触媒を用いた反応を検討することによって不斉合成への応用を試みる予定である。
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