研究概要 |
ニーム(Azadirachta indica;インドセンダン;センダン科)はインド原産の常緑樹であり,インド伝承医学であるAyurvedaにおいては最も重要な植物のひとつとされている.本研究は,ニームのさらなる高度利用を図るために,ニーム成分の探索と生物活性機能(メラニン産生抑制活性,抗腫瘍活性など)の評価を行い,ニーム成分を素材とした新たな優れた機能性分子の創製を目的とする.本年度は,ニーム種子n-Hexane抽出物から7種のAzadiradion型,新規化合物1種17-Defurano-17-oxosalanninを含む9種のNimbin型及び1種のGedunin型リモノイドを単離した.メラニン産生抑制試験においては,2種の化合物[Salannin(Cell viability 79.1%,Melanin content30.4%),3-Deacetylsalannin(85.3%;25.8%)]は濃度25μg/mlで顕著な細胞毒性を示さず,参照化合物Arbutin(Melan in content82.5%)よりも優れた抑制活性を示した.本研究によりニーム種子n-Hexane抽出物のリモノイド成分の幾つかは新規美白剤及び抗炎症剤として有用であることが示唆された.また,ニーム種子抽出物から単離した35種のリモノイド化合物についてがん細胞に対する細胞傷害活性を評価し,7種の化合物に強い細胞傷害活性を認め,中でも,7-Deacetyl-7-benzoylepoxyazadiradione,7-deacetyl-7-benzoylgedunin,及び28-DeoxonimbolideにはHL60細胞において顕著なアポトーシス誘導活性を示すことをFlow Cytometryで確認した.Western Blot法により,これらの化合物のアポトーシス誘導効果はCaspases-3,-8,及び-9を介する機構によることを明らかにした.さらに,7-Deacetyl-7-benzoylepoxyazadiradioneは正常白血球細胞には殆ど毒性を示さないことを確認し,これが白血病に対する抗がん剤のリード化合物として極めて有用であることを明らかにした.
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