本研究では、メタボリックシンドロームの予防・改善を目的に有用な天然薬物を開発することを目的とする。スクリーニングには、マクロファージ活性化を抑制する生薬を対象にして、最初に脂肪前駆細胞の分化抑制について試験を行い、次に脂肪細胞に分化させた細胞について、アディポネクチンの増強活性をとTNF-α抑制活性について試験し、これらのバイオアッセイを併用しながら活性成分を明らかにする。次に活性が認められた生薬及び単離成分について、invivoでの抗肥満及び抗糖尿病作用について評価を行い、生薬や含有成分のメタボリックシンドロームに対する有効性を明らかにするものである。 今年度は、脂肪細胞への分化抑制を有する生薬のスクリーニングを行い、合歓花及び桑根皮の画分にトリグリセリド(TG)蓄積抑制活性を見出した。そこで、TG蓄積抑制活性を指標に成分探索を行ない、単離化合物のTG蓄積抑制活性及び脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化の指標となるグリセロール3-リン酸脱水素酵素(GPDH)活性を検討した。合歓花から4種の新規フラボノイドを含む23種、桑根皮から新規化合物2種を含む26種の化合物を単離した。このうち、クエルシトリンの糖部にconiferoyl基を有する化合物に最も強いTG蓄積抑制及びGPDH抑制活性が認められ、methoxy基の位置が重要であると考えられる。桑根皮ではフラボン骨格の3位及び8位にprenyl基に有する化合物に、強いTG蓄積抑制及びGPDH抑制活性が認められた。また、これらの化合物は3T3-L1前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化過程を抑制しているものと推定される。
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