メタボリックシンドロームの根底にある肥満はインスリン抵抗性に脂肪細胞が大きく関与している。そこで、これらを予防・改善する薬物を探索するため、マウス前駆脂肪細胞3T3-L1細胞を用い、脂肪細胞への分化に影響を及ぼす天然薬物のスクリーニングしている。脂肪細胞への分化が抑制される薬物は肥満の改善が考えられ、また、分化が促進されると、小型脂肪細胞数が増加し、アディポネクチンが分泌されてインスリン抵抗性が改善されることが知られている。今年度新たにマリアアザミ抽出物に、3T3-L1細胞のトリグリセリド(TG)及びグリセロール3-リン酸脱水素酵素(GPDH)活性を濃度依存的に上昇させ、脂肪細胞への分化促進効果が認められた。そこでマリアアザミ種子について成分探索を行い、フラバノノール類のtaxifolinを単離した。TaxifolinはTG量及びGPDH活性の上昇、アディポネクチン分泌量の増加が認められた。さらに、PPAR-γに対するアゴニスト作用も認められた。この結果からマリアアザミ種子には、前駆脂肪細胞の分化を促進し、アディポネクチンの分泌量を増強する化合物を含有することから活性成分の同定を試みている。また前年度に引き続きケツメイシについてTG抑制効果を指標に成分分離を行い、2種の新規アセトフェノン配糖体を含む12種の化合物を単離しTG抑制効果を明らかにした。肥満を伴った脂肪組織には、マクロファージが浸潤し、肥大化した脂肪細胞と共にTNF-αなどの炎症性サイトカインを分泌し、軽い炎症状態にあることが知られており、マクロファージの活性化を抑制する薬物もまたインスリン抵抗性を改善すると考えられている。マクロファージの活性化の指標となるとして一酸化窒素(NO)産生抑制活性を指標に、黄蒿について活性成分の探索を行いプレニル桂皮酸誘導体に高い活性を認めた。
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