研究課題
基盤研究(C)
申請者は、p-オクチルオキシベンゼンチオール(1)が無臭で取扱い容易な有機硫黄試薬であることを見出し、これを用いたチオグリコシド(2)の調製およびこれに続くグリコシル化反応が、無臭条件下、高収率で進行することを見出した。さらに、本無臭ベンゼンチオールを用いて調製したチオグリコシドをスルホキシド体(3)へと酸化し、これを受容体基質(アクセプター糖)とするグリコシル化反応を展開し、N-フタルイミド保護された1-チオ-D-グルコサミニド誘導体をNIS/TfOHで活性化するグリコシル化反応においては、比較的高収率で二糖を合成できる明らかにした。最後に、本手法を利用して、がん細胞において活性の高いN-アセチルグルコサミン転移酵素Vの活性測定に利用できる三糖誘導体(4)の非還元末端からの合成を行った。具体的には、2 をドナー(糖供与体)、3を受容体とするグリコシル化反応で得られた p-ドデシルフェニル N-フタルイミド-D-グルコサミニル-ss(1→2)-D-マンノシルスルホキシド誘導体を、PPh_3/CCl_4/CH_3CN試薬系によって対応するチオグリコシド誘導体に還元し、続く次のステップにおいては、本チオグリコシドをドナーとするグリコシリ化を行い、標的分子である N-フタルイミド-D-グルコサミニル-ss(1→2)-D-マンノシル-β(1→6)-D-グルコピラノシド誘導体(4)を合成することに成功した。今回合成した三糖誘導体は、従来、一般的に利用されてきた還元末端からの合成を先に行い、最終工程でアグリコン部を交換する手法では合成できなかった化合物であり、従来、ほとんど報告例のなかった非還元末端からの糖鎖合成の有用性を示した点で新規であった。
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