研究概要 |
昨年までに合成したエラスチンフラグメント(EF)誘導体について結晶化を試みている.現在のところ,針状の微結晶が得られたサンプルもあるが,X線回折に適した結晶は得られていない.そのため,結晶化を実現する方法の一つとして両末端保護基を除去した塩酸塩タイプも作成した.例えば,Boc-VA-βP-βG-βV-OMeはHC1・NH2-VA-βP-βG-βV-OHと誘導することで,比較的析出しやすい塩としての性質が結晶成長を促進することを期待している.EF誘導体は引き続き結晶化を試みるとともに,これら塩酸塩も新たに結晶化しているところである. EF配列が4~5回繰り返した20残基程度のペプチドについては,固相法を用いることで(PVGVG)4を合成した.また,βアミノ酸誘導を含む誘導体も2種類合成できた.いづれも,液相法の合成と比較し,微量であるので結晶化には用いることができなかった. エラスチンはカルシウムイオンとの親和性が報告されている.このため,カルシウムイオン存在下におけるEF誘導体のCDスペクトルを測定した.カルシウムイオン濃度の上昇にともない,CDスペクトル変化が誘導されるケースが存在することが判明した.このような測定は,一部のEF誘導体でしか行っていないが,αヘリックスなどの高次構造の含有量が増加するような変化ではないと推測される.構造変化の詳細については検討中である.CDスペクトル測定も引き続き測定を行っている.
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