研究概要 |
合成したエラスチンフラグメント(EF)誘導体について結晶化を試みた.昨年試みたBoc-VA-βP-βG-βV-OMeに加え,Boc-V-βA-βP-βG-V-OMe, Boc-βV-βA-βP-G-V-OMe,及び,全アミノ酸をβアミノ酸に置換したBoc-βV-βA-βP-βG-βV-OMeも対象として結晶化を試みた.また,それらのBoc基とメチル基を脱保護した両イオン形のフラグメントも作成し,分子内または分子内間で塩を形成させることによる結晶化の促進を試みた.これらの結晶はまだ得られていないが,関連するコラーゲン様の配列をもつBoc-Pro-Hyp-Gly-OMeについては構造解析まで行い,結果を公表した(Anal. Sci., X-Ray Structure Analysis Online 26, 53-54).このペプチドは結晶中に2分子存在し,互いによく似た構造であるが,両者はHyp残基の5員環のパッカリングの差(up-packerとdown-packer)によって区別された。Pro残基はともにdown-packerであった.これらの分子は3重鎖は形成していないが,(φ,ψ)はポリプロリンの(-51,153)よりも,(Pro-Pro-Gly)9などのコラーゲンモデル構造に近い値をとっていた.このことは,コラーゲンの主鎖構造は3重鎖をとって初めて形成されるのではなく,イミノ基をもつ5員環が連続した配列は,たった3残基であっても自発的にそのような構造にフォールディングする傾向もつことを明らかにした.
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