研究概要 |
複素環の特性を利用して、環境調和型の有機合成反応を開発して、その方法を薬学的有用分子の効率的な合成法へ応用することを目的として本研究課題を企画した。 当該年度(平成20年度)に実施した研究成果について以下(1)〜(2)にまとめる。 (1)新規キラルイオン性リガンドの開発および、それを用いるリサイクル反応系を開発した。 すなわち、キラルなジフェニルエチレンジアミンおよび含窒素複素芳香環化合物等から合成した、新規キラルイオン性リガンドおよびRuCl_2-ベンゼン錯体より調整される触媒と、水素源として5:2ギ酸-トリエチルアミン混合物を用いて、イオン液体を反応媒体とすると、アセトフェノンの不斉還元が進行し、キラルなβ-フェネチルアルコールが効率よく得られることが明らかとなった。 (2)イオン性リガンドおよび遷移金属からなる触媒のうち、構造と触媒活性の相関研究を行った。 すなわち、種々のキラルイオン性リガンドを合成し、それらの触媒活性を評価した。エナンチオ選択性発現に必須である不斉源に1,2-ジフェニルエチレンジアミン部を、不斉源とイオン構造部をつなぐリンカーに、直鎖アルキルオキシフェニルスルホニル基を用い、イオン構造部を変化させた種々のイオン性リガンドを合成した。イオン構造部には、含窒素複素芳香環化合物を用い、反応系内への固定化能、およびエナンチオ選択的な反応性を指標としてリガンドの活性評価を行った。その結果、イオン部には1-メチルイミダゾールより導かれるイミダゾリウム構造を用いると、触媒活性が最も良好であり、90%以上の鏡像体過剰率を発現した。また、本反応系は5回の繰り返し使用においても、ごくわずかの反応活性の減弱であった。
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