研究概要 |
複素環の特性を利用して、環境調和型の有機合成反応を開発して、その方法を薬学的有用分子の効率的な合成法へ応用することを目的として本研究課題を企画した。 当該年度(平成21年度)に実施した研究成果について以下(1)~(2)にまとめる。 (1)新規キラルイオン性リガンドの開発および、それを用いるリサイクル反応系を開発し、その効率的な実施のために、イオン性リガンドの構造と触媒活性の相関研究を行った。 すなわち、種々のキラルイオン性リガンドを合成し、それらの触媒活性を評価した。エナンチオ選択性発現に必須である不斉源に1,2-ジフェニルエチレンジアミン部を、不斉源とイオン構造部をつなぐリンカーに、直鎖アルキルオキシフェニルスルホニル基を用い、イオン構造部を変化させた種々のイオン性リガンドを合成した。イオン構造部には、含窒素複素芳香環化合物を用い、反応系内への固定化能、およびエナンチオ選択的な反応性を指標としてリガンドの活性評価を行った。その結果、イオン部には1-メチルイミダゾールより導かれるイミダゾリウム構造を用いると、触媒活性が最も良好であり、不斉水素移動型還元反応において90%以上の鏡像体過剰率を発現した。また、本反応系は5回の繰り返し使用においても、ごくわずかの反応活性の減弱であった。 (2)上記反応系を有用化合物の合成に応用した。 すなわち、開発した繰り返し使用可能な不斉水素移動型還元反応を医薬品合成の重要鍵中間体の合成に応用した結果、現在ラセミ体で使用されている喘息治療薬テルブタリンの光学活性体の合成中間体を合成することに成功した。
|