平成20年度は、天然型ネオビブサニンAの全合成の達成を第一目標とした。その結果、新たに開発した、DMIによって加速されるDiels-Alder反応を用いて、重要中間体であるシクロヘキセノン誘導体を立体選択的に合成することに成功した。さらに数段階の変換の後、アセチリドのケトンへの付加反応を行った。ケトン近傍のアルコールの保護基として、配位効果のある2-メトキシベンジルエーテルを用いたところ、望むアキシャル攻撃による付加生成物のみを、選択的に合成することができた。その後、アルキンを還元した後、TBS基を脱保護すると、Oxy-Michael付加反応とラクトン化反応が一挙に進行し、鍵中間体となる三環性ラクトンを合成することができた。保護基の変換後、ラクトンをTebbe試薬によってエキソメチレンとした後、メタノールと酸で処理して、メチルアセタールとした。最後に、脱保護して生じたアルコールを、アルデヒドに酸化、KHMDSによってエノラートイオンに変換、3-methylbut-2-enoyl chlorideで捕捉し、初の(±)-ネオビブサニンAの全合成を達成した。合成した(±)-ネオビブサニンAのスペクトルは、天然物のデータと完全に一致した。またエナンチオマーの活性を確かめるために、光学活性カラムを用いた光学分割を行った。得られた(-)-ネオビブサニンAの活性を評価したところ、細胞培養初期は突起伸展促進活性が確認できるものの、徐々に細胞毒性が表れる事が明らかになった。また本研究課題の最終目標である、突起伸展促進活性の作用機序解明のためのツールとして、蛍光標識された活性化合物の合成を行った。その結果、側鎖に蛍光置換基を導入する事により、活性を保持した蛍光標識体の合成に成功した。これをPC12細胞に作用させたところ、活性化化合物は素早く、細胞内に何らか顆粒の状態となって進入することが分かった。
|