研究概要 |
ネオビブサニンを基に,その構造を単純化して導いた誘導体に,天然物を超えるPC12細胞に対する突起伸展促進活性があることが見いだされたことから,この化合物を基に,ネオビブサニン類の活性発現機序を明らかにすることを目的に,蛍光標識体の合成を行った.天然物のエステル側鎖部位に,クマリン型蛍光標識を持つ化合物を合成し,その活性を確認したところ,活性を保持していたことから,PC12細胞に添加してその挙動を観察した.その結果,添加初期では,細胞内に一様に何らかの小胞となって分布していた蛍光は,培養二日目で,伸展し始めた突起の付け根あたりに集まりだし,培養二日目には,伸展した突起内部に集積する様子が明確に観察された.この結果から,合成した標識化合物は,突起伸展部分で何らかの作用をしていることが推察された.一方合成した,ラセミ体のネオビブサニンBに,天然物と同様の突起伸展促進活性が認められることから,天然物のエント体も活性を有している可能性が考えられた.そこで活性を確認するためエントーネオビブサニンBの不斉合成を検討した.その結果,ゲラニオールから,シャープレス酸化,山本らのMABRを用いる転位反応を経由して,光学活性なネオビブサニンBの合成中間体を得ることに成功した.今後,この中間体から,先に確立した全合成のルートに基づいて合成を進めれば,エントーネオビブサニンBの合成が達成できると考えられる.
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