研究概要 |
これまでに,神経突起伸展促進活性を有するネオビブサニンBの初の全合成に成功し,また構造活性相関を明らかにすることで,活性を保持した単純な構造を有する誘導体の合成に成功している。今回,ネオビブサニン類の活性発現機構に迫るため,蛍光標識体の合成を計画した。まず標識を導入する事が可能な位置を特定する目的で,様々な位置に官能基を導入した誘導体の合成を行い,それぞれ活性を評価した。その結果,天然物の2位にあたる部位に,官能基を導入すると,活性が減弱するか,消失する事が明らかとなった。また,13位にフェニル基を導入すると,やはり活性が全く消失することが明らかとなった。これらの結果から,これらの位置に標識を導入すると,活性が失われてしまう事が懸念された。そこで,天然物が側鎖を有している10位に標識を導入する事にした。標識体の合成は,既知の化合物から16段階で導いた。合成できた標識体を用いて,予めPC12細胞に対する突起伸展促進活性を確認した。その結果,蛍光標識体は,標識されていない活性化合物に比べて,若干活性が減弱しているものの,40μMで有意に突起伸展促進活性を示した。そこでこの標識体を用いて,PC12細胞内における活性化合物の挙動を蛍光顕微鏡を用いて観測した。その結果,標識体は,細胞培養初日は,細胞内に何らかの小胞に含まれて均一に分布しているが,突起が伸展し始める二日目には,突起の根本に小胞が集まりだし,顕著な突起伸展が観測される培養三日目には,突起の内部に集積される事が明らかとなった。蛍光部のみを持つ化合物は,細胞内に取り込まれないことから,ネオビブサニン類は,細胞の突起伸展部で何らかの作用をしているものと考えられた。現在,ネオビブサニン誘導体と相互作用する分子を特定する目的で,光親和性標識部位を持つ誘導体の合成を進めている。
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