研究概要 |
膜タンパク質の膜間移行を利用して、インフルエンザビロソームを調製した。まず、サル腎由来のCV-1細胞にインフルエンザウイルスを感染させた。CV-1細胞では表面にウイルス抗原タンパク質(HA、NA)を突出させるが、出芽しないことが知られている。HA、NAを突出させたCV-1細胞にリポソームを加えインキュベーションすることにより、リポソームにHA、NAを移行させた。このとき、37℃、1時間のインキュウベーションが適切であることを確認した。リポソームを回収して、洗浄後、SDS PAGE、Western blottingにより移行を確認するとともに移行量の定量を試みた。また、蛍光2次抗体を用い、蛍光顕微鏡観察よりリポソーム表面へのHAの集積を認めた。フリーズ・フラクチャー電子顕微鏡観察より、リポソーム表面にHA、NAと思われるスパイクが観察され、形態的にウイルス表面に酷似し、ビロソームの構築を確認した。次に、BALB/cマウスにインフルエンザビロソーム(人工膜ワクチン)を投与し、ELISA法および、中和活性試験により免疫能を評価した。いずれの試験法においても抗体誘導効果が認められたが、特に中和活性試験においては、高い免疫活性を認めた。試験法による違いは、ELISA法では、ウイルス全ての抗体が検出されるのに対して、中和活性試験では、感染防御に関係する中和抗体のみを検出するためと解釈した。アジュバントとして2本鎖を有するMDP誘導体を人工膜ワクチンとともに投与した。高いアジュバント効果が得られ、ポジティブコントロールとして用いた死活化ウイルスに匹敵する抗体産生能を示した。さらにMDP誘導体を導入したリポソームへのHA,NAの移行の検討を開始した。
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