研究概要 |
17α-ヒドロキシプロゲステロン(17OHP)は,先天性副腎過形成症(CAH)の優れたマーカーであり,患児の薬物投与量設定・治療効果確認のためには,その血中濃度モニタリングが必須である.報告者は採血に伴う患児の苦痛や医療従事者の負担を低減させるべく,LC-ESI-MS/MSによる唾液中17OHP定量法の開発を行った.まず,2-hydrazinopyridine(HP)による誘導体化を導入して唾液中17OHP(pgオーダー)の検出を可能にした.続いて,1段階の固相抽出による簡便な前処理法を開発し,精度・正確度試験,血中濃度との相関などの各種バリデーション試験を経て,定量法を確立した.本法をCAH新生児のヒドロコルチゾン(HC)投与量設定に適用したところ,血液分析と同等の情報が得られた.さらにHCによる治療中の患児においても投薬後の17OHPレベルの減少が唾液から明瞭に読み取れ,治療効果モニタリングにも有用なことが判明した. 次にビタミンDの供給状態の指標で,骨粗鬆症予防診断マーカーとしても重要な25-ヒドロキシビタミンD_3(25OHVD_3)の唾液中レベル測定法の開発と臨床応用評価を行った.25OHVD_3をPTADとの付加体に導くとともに移動相添加剤の工夫も行い2pg/mLの定量限界を達成した.先と同様のバリデーション試験を実施してLC-ESI-MS/MS定量法を確立後,ビタミンD供給状態の評価に本法を用いた.その結果,健常女性の唾液中25OHVD_3レベルが健常男性のそれよりも有意に低く,骨粗鬆症が女性に多いことと整合する結果を得,さらに唾液中25OHVD_3レベルが低値を示した被験者がビタミンD_3サプリメントを服用した場合,本法により唾液中25OHVD_3レベル上昇が明瞭に観察できた.このように,開発した方法がビタミンD供給状態評価法として優れていることを実証した.
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