本年度の目標は、昨年度に確立できた金属ポルフィリン固定化カラムの調製法に従い、金属-Octabromotetrakis (4-carboxyphenyl) porphine固定化シリカゲル(M-OBTCPP_D、M=H_2、Cu^<2+>、Zn^<2+>、Ni^<2+>、Co^<3+>、Mn^<3+>)を調製し、中心金属の多環芳香族炭化水素(PAHs)の分離挙動に対する影響を検討することにある。 まず、中心金属の影響を検討するため、M-OBTCPP_Dを内径4.0×長さ50mm(φ4.0×50mm)のカラムに充填して多環芳香族炭化水素(PAHs)の分離挙動を検討した。その結果、中心金属の配位構造が、極性移動相及び無極性移動相で、PAHsとM-OBTCPPのπ電子との相互作用に大きな影響を与えている可能性があることがわかった。さらに、検討したカラムのなかでは、Zn-OBTCPP_Dカラムが、無極性移動相では、PAHsの保持係数も大きい割には、理論段数などが優れていることがわかった。 次いで、Zn-OBTCPP_Dカラムが、Cu-OBTCPP_Dカラムより優れたカラムであることを確認するため、実用的な長さ内径4.6×長さ150m(φ4.6×150mm)のカラムに充填し、Zn-OBTCPP_Dカラム(φ4.6×150mm)の無極性移動相でのPAHsの分離挙動などを検討した。その結果、Zn-OBTCPP_Dカラムは、Cu-OBTCPP_Dカラムに比べ、PAHsの分離係数は小さいが、分離度及び理論段数が大きいことがわかった。さらに、Zn-OBTCPP_Dカラムは、無極性移動相で、Cu-OBTCPP_Dカラムと同様の相互作用を持つ可能性があることがわかった。これらのことは、Zn-OBTCPP_Dカラムが、CrOBTCPP_Dカラムよりも優れた点を持つカラムであることを示している。 上記のことより、Zn-OBTCPP_Dは、実用的な新規HPLC用充填剤として利用できる可能性があると考えられ、中心金属の影響を検討するという今年度の目標は達成できたと考えられる。
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