研究概要 |
Cu-八臭素化ポルフィリン固定化シリカゲル(Cu-OBTCPP_Dには,ポルフィリンと結合していない極性基が多数存在しており,これが試料のHPLCでの分離挙動に影響を与えていることが知られている.本年度は,この残存極性基を修飾することで,その影響をカバーし,さらには,修飾基により新たな相互作用を付加できるのではないかと考え検討を行った.なお,試料としては試料PAHとしてはbenzene, naphthalene, anthracene, phenanthrene, pyrene及びtriphenyleneを単独あるいはこれらを混合した6 mixを用いた.無極性移動相においてCu-OBTCPP_Dカラムでは,6 mixは5本のピークに分離した,残存アミノ基をdecanoyl (Dec)でアシル化したとき,6 mixの保持時間はやや短縮した.一方,acetyl(Ace)やpivaroyl基でアシル化したとき,保持は延長傾向となった.これは,修飾によりアミノ基がアシル化でカバーされ,PAHとの静電的相互作用が低下するが、Aceやpivaroyl基は、Dec基と異なりポルフィリン周辺の電子密度が上昇させポルフィリンのπ電子雲が拡大したと同じ効果、すなわち、分散力の増加をもたらしたためと考えた.また,Cu-OBTCPP_Dカラムと修飾カラムとの間に,いずれの場合においても,k値に一次の相関が認められるため,修飾により分散力の増加によるPAHの保持の増強のみで、新たな分陰機構の付加はないと考えた,極性移動相中では,Decでアシル化したとき6 mixの分離の向上とπ-alkyl相互作用を付加が観測された,Aceによるアシル化では,特に変化は見られなかった.また,シリル化の影響では,シラノール基のみのシリル化では,PAHの保持時間の減少が,TMCSを用いるシラノール基とアミノ基のシリル化でもPAHの保持時簡の減少とPAHの分離の向上が見られた.以上の検討から.短時間で試料を分離することのできるTMCS化Cu-OBTCPP_D-Decカラムを開発し,その試料との相互作用を明らかにすることができた.今後,このカラムが医薬品などのπ電子を持つ試料を分離するHPLC充填剤として利用されることを期待する.
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