疎水相互作用の指標として用いられている化合物の分配係数log Pに関する理論計算結果に基づき、疎水相互作用を考慮した薬物-受容体相互作用エネルギーを表す一般理論モデル式を構築した。HIV-1プロテアーゼ・阻害剤および炭酸脱水酵素・阻害剤間の相互作用についての阻害活性値を一般Born式/接触表面積(GB/SA)による疎水相互作用・水和エネルギー項とフラグメント型非経験的分子軌道法(FMO)計算による複合体の結合エネルギー項からなる線形式を構築し、従来の古典的定量的構造活性相関解析法に比較を行い、本方法の優位性を検証・確認した。 以上の結果から、阻害剤と標的酵素の特定アミノ酸残基との電子的相互作用および疎水相互作用エネルギーが全体の結合エネルギーを支配していること、両者がほぼ実測の結合自由エネルギー変化と線形であること、さらに阻害剤が同族体の場合においては配座エントロピー項などこれら以外のエネルギー項も疎水相互作用あるいは結合エネルギーと線形であること等を明らかにした。 この他に、上記の方法と手順によって、ノイラミニダーゼとタミフル等の抗インフルエンザ剤の相互作用解析、フラボノイド等フェノール化合物のラジカル補足活性等の電子・原子レベルの定量的構造活性相関解析を行った。 上記の一連の研究結果を、疎水相互作用を取り込み、かつ非経験的分子軌道法計算に基づいた新しい定量的構造活性相関法として発表した。
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