難治性呼吸器感染症の治療を指向し、肺胞マクロファージ(宿主細胞)を標的し細胞内寄生菌を完全に殺滅するDDSの構築を目的とする。これにより、我が国のみならず、国際社会において難治性呼吸器感染症の治療に貢献する。 本研究は、2つの構成からなる。1)薬物分子の肺細胞輸送:トランスレーショナル機構による呼吸器感染症の治療に有効とされる薬物分子(抗菌薬を含む免疫賦活剤や炎症性サイトカイン遺伝子などの核酸分子)の肺胞マクロファージの取り込みについて、培養細胞(ラット由来継代肺胞細胞NR8383)を用いて調べた。肺投与型DDS製剤の開発を成功させるためには、投与された薬物が肺上皮細胞を介して吸収され全身循環系へ移行しないことが重要である。そこで、肺上皮細胞での肺表面方向(分泌方向)のトランスレーショナル機構を培養細胞(肺上皮細胞Calu-3(ヒト肺腺癌由来気管上皮細胞、ATCC))を用いて調べた。抗菌薬の肺投与で、抗菌薬の肺肺胞マクロファージ及び肺粘液層に高い抗菌薬の集積性、また全身循環系へ移行しないことを確認した。 2) リガンドの表面修飾リポソーム(担体)の肺細胞輸送:トランスレーショナル機構によるリポソーム製剤の製造及びそれら製剤の粒子径、表面電荷などの物性的な特徴について1)と同様の方法で検討を行った。さらに、数種のリガンドの表面修飾よるリポソーム(担体)の肺胞マクロファージの取り込み機構の違いについての検討をした。リガンド候補としてマンノースおよびポリエチレングリコールPEGを用いたトランスレーショナル機構を利用し、肺胞マクロファージを標的し、細胞内寄生菌の完全殺滅のためのDDSの構築を目指した。ラットへの肺投与で、マンノース修飾リポソームは、肺胞マクロファージでの高い集積性を、一方、PEG修飾リポソームは、肺粘液層に高い集積を認めた。
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