研究課題
脂質異常症の治療においては、体内のコレステロールの調節・制御が重要である。しかし、個々の臨床検体について、コレステロール合成・吸収・代謝の状態を迅速に評価する手法はこれまでに報告されていない。そこで、本研究ではメタボリック症候群の改善を「生体内のコレステロール調節」という視点から評価することを目的とし、コレステロール前駆物質を合成マーカー、植物ステロール類を吸収マーカー、ヒドロキシコレステロール類を代謝マーカーと位置づけ、血液中のこれらのマーカーを高感度かつ迅速に同時分析することによって治療薬の効果を評価する手法を確立する。平成20年度は、コレステロールの合成マーカーとしてコレステロール前駆物質であるラソステロール、吸収マーカーとして植物ステロール類(シトステロールおよびカンペステロール)を対象物質とし、GC-MSを用いてこれらを微量濃度まで再現性良く分離定量するための同時分析法を検討した。対象物質は血漿中で大部分がエステル化体であることから、総量を定量するため、血漿50μLに5mol/LのKOHを1mL加えて60℃で60分間反応させてケン化処理を行った。処理液を中和しヘキサン抽出後、トリメチルシリル誘導体化を行いGC-MSで定量した。この多検体簡易定量法により、血漿中に多量に含まれるコレステロールなどの夾雑物質の妨害を受けることなく対象物質の迅速な定量を可能とした。定量下限値は0.05mg/dL、血液を用いた添加回収試験では93〜95%と良好な回収率が得られた。さらに、本法を用いて健常人と高コレステロール血症患者の血漿中合成マーカーおよび吸収マーカーを定量し、治療薬の服用に伴う合成/吸収バランスの変化について解析を試みた結果、各マーカー/総コレステロールの比率を用いる評価の有用性が示唆された。
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