研究課題
本研究ではメタボリック症候群の改善を「生体内のコレステロール調節」という視点から評価することを目的とし、コレステロール前駆物質(スクアレン、ラソステロール)を合成マーカー、植物ステロール類(シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール)を吸収マーカー、ヒドロキシコレステロール類を代謝マーカーと位置づけ、これらを高感度かつ迅速に同時分析することによって治療薬やサプリメント成分の効果を評価する手法を確立する。平成21年度は、20年度に開発した合成・吸収マーカーのGC-MS一斉定量法にスクアレンとスティグマステロールを加えるとともに、対象物質の誘導体化に対する挙動の違いに着目してIS(内標準物質)を採択し、定量精度の向上を図った。その結果、夾物質が多い血漿においては、TMS誘導体化を受けないスクアレンは5α-コレスタンをISとし、TMS誘導体化を受けるラソステロール及び植物ステロール類はこれらと同様の挙動を示すエピコプロスタノールをISに用いることで、より良好な定量精度が得られた。さらに、ヒト肝癌由来HepG2細胞を用いた細胞培養系における、細胞内のコレステロール合成マーカー(スクアレンおよびラソステロール)の定量法を確立し、スタチン系治療薬ならびにポリフェノール化合物のコレステロール生合成抑制作用の評価を試みた。HepG2細胞内のコレステロール合成マーカーは、ジルコニアビーズを用いた細胞膜破砕、ケン化、溶媒抽出の後、GC-MS定量を行うことで良好な直線性と回収率が得られた。10%LPDS(リポタンパク欠乏ウシ血清)含有DMEM培地を用いてHepG2細胞を培養すると、FBS培地に比べてスクアレンは約2倍、ラソステロールは約10倍の合成亢進が認められた。一方、アトルバスタチンまたはプラバスタチン存在下では、Hep細胞内のスクアレンは約28%~47%、ラソステロールは約70%減少し、治療薬の主作用であるコレステロール生合成の抑制が認められた。この系を用いてポリフェノールの一種である(-)エピカテキンを評価した結果、ラソステロールが約20%減少し、コレステロール生合成抑制効果が認められた。
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