研究概要 |
我々は以前、AHPPにはキサンチンオキシダーゼ(XO)の阻害作用があることを見出した。XO阻害剤AHPPにより、XOによって生成される活性酸素(O_2-)が抑えられると、血管弛緩作用を有するNOとそのXO由来のO_2-との反応が抑えられる。即ち、NOの消費を抑える結果となり、そのNOが血管内皮に作用して血圧の低下をもたらし、抗高血圧作用があることを報告した(J.Cont.Release 2009,135,211-217)。今回の研究は、XOによるO_2-生成が炎症の1つの要因と考え、この阻害剤AHPPを高分子ミセル化することにより体内でのt_1/2を延長し、腫瘍部や炎症部へAHPPのミセル剤を集中させ、炎症性のO_2-の生成を抑え、抗炎症作用を発揮する薬剤を目指し、SMA-AHPPミセル化剤、AHPPのPEG化物を作成した。これらは両者ともミセルを形成し、ラット肝の虚血再灌流モデルにおける肝障害を抑制することを確認した。これらは文献Fang et al,Exp.Biol.and Med.available online,2010を中心に報告している。また、SMA-AHPPは体内に投与するとアルブミンに結合するため、t_<1/2>はもとのAHPPに比べ延長されることが予想された。 これらAHPPのミセルはラットの30分虚血後再灌流モデルにおける肝障害は血中肝酵素GOT、GPT、ALT、ALPで評価し、さらに腎機能の指標の尿素窒素およびクレアチニンレベルの上昇を著明に抑えることを明らかにした。このものは手術時の虚血性再灌流組織障害の予防への応用展開が可能になると考えられる。
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