研究概要 |
本研究の最終目的である骨粗鬆症におけるMMP13の関与を明らかにするために、平成20年度は以下の検討を行った。 A. MMP13発現細胞の同定と組織学的解析: In situ hybridization法を用いた骨組織におけるMMP13の分布解析の結果、MMP13は骨成長板直下の軟骨細胞、そこから連続する海綿骨上の骨芽細胞に発現を認めた。連続切片を用いた免疫染色法によりmRNAとタンパク局在の差異を検討した結果、分泌型の酵素であるMMP13はin situ hybridizationで検出されたmRNA発現細胞の近傍でタンパクが存在することが明らかとなった。組織化学的検討の結果、MMP13はTRAP陽性の破骨細胞の近傍にも存在し、骨芽細胞により産生・分泌されたコラゲナーゼが、破骨細胞による骨吸収過程において、コラーゲンなどの骨基質を協調して破壊することが示唆された。これらは、骨吸収優位の高回転型の骨代謝を示す骨粗鬆症の発症過程において、MMP13が関与する可能性を示す重要な発見である。 B. MMP13KOにおける骨吸収遺伝子の解析: MMP13KOマウスの大腿骨よりmRNAを抽出し、破骨細胞分化の調節を制御するRankl、 Opg、また、 Rank, Nfatcl等の破骨細胞の分化や機能に関連する受容体や転写因子等の遺伝子発現を解析した。結果、MMP13KOマウス由来の大腿骨では、破骨細胞の分化に関連する遺伝子群の発現抑制が認められた。さらに骨形成に関与するCbfal/Runx2、Osterix等の遺伝子発現を検討したところ、骨芽細胞の分化に関連する遺伝子群の発現上昇が認められた。平成20年度の研究の結果、MMP13KOマウスでは骨形成が優位かつ、骨吸収が低下することが明らかとなり、骨吸収が亢進する骨粗鬆症の発症へのMMP13の関与が示唆される重要な知見となった。
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