本研究の最終目的である骨粗鬆症におけるMMP13の関与を明らかにするために、平成21年度は以下の検討を行った。 A.破骨細胞を用いたIn vitro解析: MMP13KOマウスおよび野生型マウス由来の細胞を用いて破骨細胞の分化と機能を調べ、MMP13の骨吸収への関与を調べた。両マウスより骨髄細胞を採取し、骨吸収性サイトカインの存在下で、骨芽細胞との共存培養を行ない、破骨細胞の分化誘導を調べた。その結果、MMP13KOマウス由来の破骨細胞はコラーゲン分解能が低下しており、吸収窩が形成されにくく、骨を吸収しにくいというデータを得た。骨吸収には、ミネラルの吸収のみならず、コラーゲンの分解が必須であることが明らかとなった。 B.MMP13KOマウスの頭頂骨、長管骨を用いた骨吸収活性のEX vivo解析: MMP13KOマウスでは海綿骨量が増加し、破骨細胞の骨吸収が抑制されている。そこで、MMP13KOマウスおよび野生型マウスより、新生仔由来頭頂骨を採取して器官培養を実施した。その結果、骨吸収性サイトカイン(インターロイキン-1)で処理後に培養上清を用いたカルシウム濃度の測定によって骨吸収活性を定量化したところ、MMP13KOマウスではIL-1による骨吸収の発現が軽微になることが明らかになった。さらに、Western Blot法を用いた解析では、野生型ではIL-1による骨吸収亢進により活性型及び潜在型のMMP13が産生亢進されたが、MMP13KOでは検出されなかった。一方、ゼラチンザイモグラフィー法を用いた解析において、IL-1によるMMP2、MMP9の産生増加と活性化は同様に起こっていた。従って、骨吸収の発現には、MMP13によるコラーゲンの分解が必須であることが明らかとなり、骨粗鬆症の発症におけるMMP13の役割が示唆された。
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