近年、国内外で盛んに研究が進められているRNA干渉(RNAi)については未だその生理機能について不明な点が多い。研究代表者は、線虫の新規RNAi関連遺伝子drh-3が染色体安定化に関与することを独自に見いだした。今年度はDRH-3分子複合体の機能解明に関連する以下の研究項目を実施した。 (1) DRH-3タンパク質を含む機能分子複合体の解明:研究計画に従い、免疫沈降法を利用してDRH-3タンパク質複合体の単離と分析を行うために必要とされるDRH-3抗体の調製を進めた。ウサギをDRH-3ペプチド(2種類)で免役し、抗DRH-3抗血清の作成を行った。今後、項目2に挙げたDRH-3タンパク質を用いてDRH-3固定化カラムを作成し、抗DRH-3抗体を精製し、免疫沈降実験や免疫染色解析を行う予定である。 (2) DRH-3タンパク質の大量調製:抗体調製や生化学的解析に必要なnativeなDRH-3タンパク質を大量調製するため、大腸菌を利用したタグ融合DRH-3タンパク質の誘導発現系について検討した。通常の方法では不溶化してしまったが、様々な条件を検討した結果、コールドショック誘導によるタンパク質発現系を用いることで効率良くDRH-3タンパク質を可溶化できることを明らかにした。現在、DRH-3タンパク質の精製を進めており、さらにDRH-3の生化学的解析と抗体調製を行う予定である。 (3) drh-3遺伝子の発現様式の解析:RT-PCR法とin situ hybridization法により、drh-3遺伝子の発現解析を行った結果、線虫の発生・成長過程に伴って発現量が上昇することを明らかにした。増殖阻害剤等を用いた実験から、drh-3遺伝子発現と卵巣形成との関連性が強く示唆された。 以上の研究を継続することで、これまで不明であった高等生物のRNAiによる染色体動態制御機構の一端をタンパク質レベルで解明できると期待される。
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