近年、国内外で盛んに研究が進められているRNA干渉(RNAi)については未だその分子機能について不明な点が多い。研究代表者は、線虫の新規RNAi関連遺伝子dth-3が染色体安定化に関与することを独自に見いだした。今年度はDRH-3分子複合体の機能解明に関連する以下の研究項目を実施した。 (1)DRH-3タンパク質を含む機能分子複合体の解明:DRH-3ペプチドで免役したウサギ血清から粗抽出した抗体画分についてウエスタンブロットで評価を行ったが、免疫沈降に用いる充分な特異性を確認できおらず、現在、DRH-3アフィニティカラムによる精製を試みている。並行して、線虫のRNAi関連タンパク質14種類についてcDNAクローニングを行い、酵母two-hybrid解析を進めた。これまでにRDE-2とMUT-7など複数のRNAi因子間の相互作用を同定できたことから、網羅的な相互作用解析に基づいて、RNAi機能複合体の構成因子を解明できることが示された。 (2)DRH-3タンパク質の大量調製:抗体調製や生化学的解析に必要なnativeなDRH-3タンパク質を大量調製するため、前年度に確立したコールドショック誘導によるタンパク質発現系を用いて、可溶化DRH-3タンパク質をメタルアフィニティカラムで精製することに成功し、さらに複数種のカラムで精製を進めた。またDRH-3の3種類の変異タンパク質発現プラスミドを作成し、DRH-3の生化学的解析に向けた準備を完了した。 今後、酵母two-hybrid法による網羅的な相互作用解析を進めることで、DRH-3を含めた線虫RNAi複合体構成因子を同定し、新たな構成因子の生化学的解析や相互作用ドメインの解明を目指す。
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