研究課題
ニガウリ胎座の凍結乾燥粉末をリン酸緩衝化生理食塩水で撹絆・抽出し、遠心後の上清を濾過滅菌し抽出物とした。コンフルエントの培養ヒト真皮線維芽細胞をこの抽出物と共に培養したところ、本抽出物は添加後96時間からHGF産生を濃度依存的に促進し、HGF mRNA発現も増加させた。しかし、対照として用いたEGFと比べるとHGF産生誘導作用の発現時間が遅かった。また本抽出物は多量のHGFを産生するMRC-5ヒト胎児肺線維芽細胞からのHGF産生も促進した。本抽出物中の活性成分の精製をエタノール分画、各種クロマトグラフィーにより試みたが、ゲル濾過クロマトグラフィー以外では精製度の上昇が認められなかった。本抽出物によりERK、p38MAPK及びJNKの3つのMAPKsのリン酸化が添加後24〜48時間以降持続的に増加し、一方、本抽出物によるHGF産生誘導は、MEK阻害剤、p38MAPK阻害剤及びJNK阻害剤により抑制された。また、ニガウリ胎座抽出物は添加後72〜120時聞で細胞増殖を有意に促進した。EGFは添加後16時間で増殖促進作用を発揮したが、ニガウリ胎座抽出物はこの時間では同作用を示さなかった。本抽出物中のHGF産生誘導活性物質はトリプシン処理で失活せず、また、70%エタノールで沈殿しなかった。ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した活性物質の分子量は約14000であり、HGF産生誘導作用と細胞増殖促進作用のピークの溶出位置はほぼ一致した。以上のようにニガウリ胎座抽出物はヒト真皮線維芽細胞のHGF産生及び増殖を誘導することが明らかとなり、このことはニガウリの創傷治癒効果に関与する可能性がある。また、本作用は何らかの増殖因子産生誘導を介した間接的なものであること及び活性物質は非タンパク質性の高分子であることが示唆された。
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Cytokine 46
ページ: 119-126