ニガウリ可食部抽出物も同胎座部抽出物には及ばないが、ヒト真皮線維芽細胞におけるHGF産生誘導作用を示した。しかし、ラットに2%ニガウリ可食部凍結乾燥粉末添加固型飼料を8日間摂取させたが、血中および肝臓中HGFレベルの増加を認めることはできなかった。一方、伝統的な漢方薬であり、肝線維化抑制作用も報告されている冬虫夏草の抽出物がHGF産生誘導作用を示すことをすでに見出しており、今回、本作用について検討し、以下の結果を得た。冬虫夏草菌糸体(P. h. Chen)凍結乾燥粉末をリン酸緩衝化生理食塩水で攪拌・抽出し、遠心後の上清を濾過滅菌し抽出物とした。コンフルエントのヒト真皮線維芽細胞およびMRC-5ヒト胎児肺線維芽細胞をこの抽出物と共に培養したところ、冬虫夏草抽出物は両細胞のHGF産生を用量依存的に促進し、最大産生量はヒト真皮線維芽細胞で対照の約20倍、MRC-5細胞で約2.5倍に達した。また、HGF mRNAレベルも冬虫夏草抽出物処理により増加した。本抽出物によるHGF産生誘導はアデニル酸シクラーゼ阻害剤のMDL-12330A及びPKA阻害剤のH-89により抑制されたが、MAPKs阻害剤およびPKC阻害剤では影響されなかった。冬虫夏草抽出物により細胞内cAMPレベルの上昇とCREBリン酸化の増加が早期に認められた。本作用の活性成分の分子量はゲルろ過の結果より3万以上と推定され、トリプシン処理で失活しなかった。以上のように、冬虫夏草抽出物のHGF産生誘導作用にはcAMP-PKA経路によるCREBリン酸化の増加の関与が示唆された。次に、バチルス属細菌により産生される抗生物質のポリミキシンBが、ヒト真皮線維芽細胞におけるHGF産生を誘導すると共に、本細胞の増殖も促進することを見出した。ポリミキシンBは本細胞のDNA合成を数倍に増加させ、また、細胞数も増加させた。
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