ヒト真皮線維芽細胞におけるポリミキシンBのHGF産生誘導作用メカニズムの解析を行い、本薬物がHGF mRNA発現を24および48時間で5~8倍に増加させること、本薬物によるHGFタンパク質産生誘導がMEK阻害剤(PD98059)、p38 MAPK阻害剤(SB203580)およびJNK阻害剤(SP600125)の処理により抑制されること、PKC阻害剤(GFIO9203X)及びPI3K阻害剤(wortmannin)では影響されないことが明らかとなった。これらの阻害剤のうちPD98059による抑制が最も強いものであった。また、これと一致してポリミキシンB添加によりERK、p38 MAPKおよびJNKのリン酸化がそれぞれ増加した。それらのピークはERKおよびJNKではポリミキシンB添加後2時間、p38 MAPKでは24時間以降であった。以上の結果よりポリミキシンBのHGF産生誘導作用にはERK、p38 MAPKおよびJNKを介するMAPK経路の活性化の関与が示唆された。 ポリミキシンBをラットに1日1回、2日間静脈内投与することにより、血清中のALT並びにAST活性を上昇させることなく、血漿中および肝臓中HGFレベルの上昇が認められた。 ポリミキシンBのヒト真皮線維芽細胞増殖促進作用の時間経過を上皮増殖因子(EGF)と比較したところ、増殖誘導開始時間がEGFより若干遅れるものの顕著なずれがなかったことから、ポリミキシンBの直接的な刺激により細胞増殖誘導されると判断された。また、ポリミキシンB処理により130kDaタンパク質のチロシンリン酸化が速やかに誘導された。
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