研究概要 |
DNA損傷はがん細胞選択的な細胞死を引き起こす。この機構として、がん細胞では癌抑制経路の異常によりDNA損傷が生じても細胞周期は進行し、G2チェックポイントを乗り越えM期に侵入した結果、分裂死を引き起こすと考えられる。しかし、M期において細胞死に至る分子メカニズムは不明である。本研究は、DNA損傷を受けたがん細胞がM期に進入後に分裂死に至るメカニズムの解明を第一の目的とした。 昨年度はヒト全遺伝子に対するshRNA発現レンチウイルスライブラリーを用いて、発現抑制がmonastrol耐性を与える12遺伝子を同定した。今年度はこれら12種類の遺伝子に対して新たにデザインした36種類のsiRNAを用いて、これら12遺伝子のノックダウンが本当にmonastrol誘導性細胞死を抑制するかを検討した。 遺伝子あたり3種類ずつデザインされたsiRNAをHeLa細胞にそれぞれ導入し、3種類のsiRNA全てががmonastrol誘導性分裂期細胞死を抑制するかどうかを検討したところ、これらのうち7種類において抑制効果が認められた。これらの遺伝子はBUB3,TRIM28,MAD2L1,NPC2,BUB1B,TTK,EFTUD2であり,monastrolやEg5 inhibitorの効果とこれらの遺伝子発現との関連を明らかにすることにより,これら阻害剤がどのようながん種に対して治療に応用できるかの指標となると考えられる。
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