本研究では、先行するウィルス感染様刺激によって喘息の発症促進あるいは抑制が認められるマウスモデルを利用して、その機序を解明することにより、気管支喘息の病態解明ならびに新規治療標的の探索を目的としている。 本年度は、昨年度に引き続き、2本鎖RNA (dsRNA)前処置による喘息様病態形成の促進および抑制に関与する遺伝子の解析を行った。その結果、ダニ抗原低用量投与群に比しダニ抗原低用量+dsRNA低用量投与群において、投与後2、8、24時間後の全ての時間帯に遺伝子発現が2倍以上に亢進または低下している遺伝子数はそれぞれ31または0であった。これに対し、ダニ抗原低用量投与群に比しダニ抗原低用量+dsRNA高用量投与群においてはそれぞれ270または207であった。一方、対照として検討したダニ抗原低用量投与に比し高用量投与において、投与後2、8、24時間後の全ての時間帯に遺伝子発現が2倍以上に亢進または低下している遺伝子数はそれぞれ28または0であった。今後、個々の遺伝子に関して、in vitroとin vivoの相関性など、精査を加えていく予定である。 また、本年度のもう一つの課題として、in vivoにおけるCD8陽性細胞の意義を検討した。すなわち、dsRNAによるダニ抗原のcross presentationが生じている可能性を検討する目的で、抗CD8抗体を実験期間中に投与し、低用量ならびに高用量のdsRNAによる表現型に及ぼす影響を検討した。その結果、抗CD8抗体は低用量dsRNA投与による喘息発症の促進および高用量dsRNAによる喘息様病態形成の抑制を有意に抑制した。また、CD8細胞の遊走に関与することが知られているleukotriene B_4の関与を抗LTB_4受容体拮抗薬を用いて検討したところ、低用量dsRNAによる喘息発症促進の系において好酸球増多を有意に抑制した。
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